席亭からのご挨拶


 育児休業中だった20年ほど前。

かわいいわが子の寝顔を見ていて、ふと不安を覚えました。このままでは、子離れができないかもしれない-。そう思ったのです。子ども以外に夢中になれる何かが、自分には必要だと気づきました。

 はじめて囲碁教室に足を運んだのは、それからほどないある日のことです。ルールが少ないから、自分にも覚えられるだろう。そんな軽い気持ちでした。

 

 碁の面白さ、楽しさ、素晴らしさは、私の想像を超えていました。対局ができるくらいに上達すると、ひさしく忘れていた「ドキドキ」を感じるようになったのです。 

 

 チャンスのときもピンチのときも、心臓が早鐘を打って、血が体中をぐるぐる回る感じがします。勝った喜びはもちろん、負けた悔しさも、毎日の生活にハリを持たせてくれました。いさぎよく「足りません」と言う勇気は、人生の他の場面でも必要なものではないでしょうか。大袈裟ではなく、盤上にはロマンがあります。

 

 碁を打つ時間を増やしたい一心で、囲碁サロンに勤めるようになったのが、16年まえのことでした。思いはさらに昂じて、平成19年 自分で囲碁サロンを始めることになりました。  

 

 私は級位者です。けれども、碁の魅力をたくさんの人に知らせたいという気持ちは、他の誰より強いと自負しています。高段者から級位者まで、大人から子どもまで、そして碁をまったく知らない人たちも、楽しく気軽に集える-。それが私の思い描く理想の囲碁サロンです。

 

 お集まりいただいた方々に、優雅な気持ちでお楽しみいただけるよう、名を「優碁」といたしました。

 

 みなさまのお運びを心よりお待ち申し上げます。 

 

 平成19年4月

  囲碁サロン 「優碁」席亭・北原直美

(最近の写真は恥ずかしいので約20年前の写真です)